OSI参照モデルとは?初心者でもわかる7階層の仕組みと覚え方を図解で解説

OSI参照モデルのイメージ画像 IT基礎知識

「OSI参照モデル」という言葉を聞くと、「7階層?」「TCP/IPとどう違うの?」と混乱してしまう人も多いはずです。特に、ITパスポートや基本情報技術者試験では「OSIの〇層に対応するプロトコルは?」といった問題が頻出します。

しかし、OSI参照モデルの本質は暗記ではなく、通信の流れを分担して整理する考え方です。この記事では、OSI参照モデルの仕組みをイメージしやすい例えとともにわかりやすく解説し、覚え方や試験で狙われやすいポイント、実務での活用例までまとめて紹介します。


  1. 1. OSI参照モデルとは?(定義と基本のイメージ)
    1. 例えで理解する
    2. よくある誤解
  2. 2. OSI参照モデルの7階層をわかりやすく解説
    1. 第7層:アプリケーション層
    2. 第6層:プレゼンテーション層
    3. 第5層:セッション層
    4. 第4層:トランスポート層
    5. 第3層:ネットワーク層
    6. 第2層:データリンク層
    7. 第1層:物理層
  3. 3. OSIモデルとTCP/IPモデルの違い
    1. 対応関係(一覧)
    2. 混同しやすいポイント
  4. 4. 通信の流れを追って理解する(アプリから物理まで)
    1. ステップ①:アプリケーション層
    2. ステップ②:プレゼンテーション層
    3. ステップ③:セッション層
    4. ステップ④:トランスポート層
    5. ステップ⑤:ネットワーク層
    6. ステップ⑥:データリンク層
    7. ステップ⑦:物理層
    8. 送信から受信までの要約
  5. 5. 覚え方と試験対策
    1. 覚え方①:「上は人・下は機械」
    2. 覚え方②:語呂合わせで順番を固定
    3. 覚え方③:日常のモノにたとえる
    4. 試験で狙われやすい要点
  6. 6. 実務でのOSIモデル活用例
    1. 活用例①:通信トラブルの切り分け
    2. 活用例②:ネットワーク設計・セキュリティ
    3. 活用例③:チーム間コミュニケーションの共通言語
  7. 7. 実際の事例から学ぶ(OSIで読み解く)
    1. 事例①:大規模通信障害(ネットワーク層)
    2. 事例②:Wi-Fiの接続不良(データリンク層・物理層)
    3. 事例③:Webの脆弱性悪用(アプリケーション層)
    4. 事例④:認証トラブル(セッション層)
  8. 8. FAQ(よくある質問)
    1. Q1. OSIとTCP/IP、どちらを覚えるべき?
    2. Q2. ルーターとスイッチの違いは?
    3. Q3. 試験で落としやすいポイントは?
  9. 9. まとめ
    1. OSI参照モデルの全体像(再整理)
  10. あわせて読みたい

1. OSI参照モデルとは?(定義と基本のイメージ)

OSI参照モデル(Open Systems Interconnection model)とは、通信の仕組みを7つの階層に分けて考える国際標準モデルです。ネットワークでデータをやり取りする際、「アプリの操作」から「ケーブルで信号を送る」までの多くの工程を、役割別に整理しています。

💡 チェックポイント:
OSI参照モデルは、通信の流れを7つの段階に分けて考える「地図」。各層が役割を分担して連携することで、ネットワーク全体が正しく機能します。

例えで理解する

  • 手紙の内容を書く人(アプリケーション層)
  • 封筒に入れて宛名を書く人(プレゼンテーション/セッション層)
  • 郵便局で仕分けを行う人(トランスポート層/ネットワーク層)
  • トラックや配達員が届ける(データリンク層/物理層)

それぞれが役割を分担して連携することで、1通の手紙(データ)が正しく相手に届きます。

よくある誤解

OSIモデルは実際の通信でそのまま使われている仕組みではありません。OSIは「整理・理解のためのフレームワーク」で、現実のインターネット通信ではTCP/IPモデルが使われます。

⚠️ 注意:
OSIは理論、TCP/IPは実践。混同しやすいので、「OSI=理論」「TCP/IP=実運用」と覚えると整理しやすいです。
📝 アドバイス:
丸暗記よりも、人やモノのやり取りにたとえると理解が進みます(郵便・会社の部署など)。

2. OSI参照モデルの7階層をわかりやすく解説

上の層ほど人に近い動作(アプリや操作)、下の層ほど機械的な動作(電気信号やケーブル)を扱います。

💡 チェックポイント:
上から順にアプリケーション → プレゼンテーション → セッション → トランスポート → ネットワーク → データリンク → 物理。上3層はソフト寄り、下4層はネットワーク機器寄り。

第7層:アプリケーション層

人が直接使うアプリやサービスの層。
主なプロトコル:HTTP、HTTPS、SMTP、FTP、DNS

📝 アドバイス:「人間に一番近い層」。ブラウザやメールを開いた瞬間にここが動きます。

第6層:プレゼンテーション層

データの形式や暗号化・圧縮を担当。
例:TLS(暗号化)、JPEG、MP3

⚠️ 注意:「見た目や形式を揃える」役割。安全に送るための暗号化もここ。

第5層:セッション層

通信の開始・維持・終了を管理。リモート接続(SSH、RDP)など。

💡 チェックポイント:「会話の司会者」。つながりの管理役です。

第4層:トランスポート層

データの分割・再送制御・エラーチェック、ポート番号の管理。
主なプロトコル:TCP、UDP

📝 アドバイス:「配達ラベルで宛先を明確に」。どのアプリ宛かを識別します。

第3層:ネットワーク層

IPアドレスで経路を決定(ルーティング)。
主なプロトコル:IP、ICMP、(ARPは橋渡し的に関与)/主な機器:ルーター

⚠️ 注意:「住所と経路」の層。最適ルートを見つけます。

第2層:データリンク層

同一ネットワーク内での通信を担当。MACアドレスで識別。
主なプロトコル:Ethernet、PPP/主な機器:スイッチ、ブリッジ

💡 チェックポイント:「社内便」の層。建物内(LAN内)で正確に届けます。

第1層:物理層

電気・光・電波などの信号としてデータを送受信。
主な機器:LANケーブル、ハブ、コネクタ

📝 アドバイス:「データが実際に通る道」。断線や接触不良はここで発生。
⚠️ 注意まとめ:
トラブルは下から順に確認(物理 → リンク → ネットワーク → … → アプリ)すると特定が速い。

3. OSIモデルとTCP/IPモデルの違い

OSIは理論の7層、TCP/IPは実運用の4層です。TCP/IPは実際の通信に合わせて、OSIの複数層を統合しています。

💡 チェックポイント:
OSI=7層/TCP/IP=4層。
実運用上は、アプリ系3層(7〜5層)がTCP/IPの「アプリケーション層」に統合されます。

対応関係(一覧)

OSI参照モデル TCP/IPモデル 主な内容
アプリケーション層 アプリケーション層 Web・メールなど(HTTP・SMTP 等)
プレゼンテーション層 アプリケーション層 データ変換・暗号化等もここに含む
セッション層 アプリケーション層 通信の開始・維持・終了の管理
トランスポート層 トランスポート層 TCP・UDP、分割と再送制御
ネットワーク層 インターネット層 IPアドレス・経路制御(IP・ICMP)
データリンク層 ネットワークインターフェース層 同一ネットワーク内通信(MAC・Ethernet)
物理層 ネットワークインターフェース層 ケーブル・信号レベルの通信
📝 アドバイス:一言で整理:「TCP/IPは現実の動作に合わせてシンプル化」。OSIは教科書、TCP/IPは実務マニュアル。

混同しやすいポイント

  • HTTPは両モデルとも「アプリケーション層」。
  • IPアドレスはOSIで第3層、TCP/IPでは「インターネット層」。名前は違うが役割は近い。
  • LANケーブルやハブはOSIの物理層、TCP/IPではネットワークインターフェース層。
⚠️ 注意:層の数が違っても、通信の流れ自体は同じ。迷ったら「上=人、下=機械」で整理。

4. 通信の流れを追って理解する(アプリから物理まで)

「Webサイトを開く」操作を、上から下へたどってみます。

ステップ①:アプリケーション層

ブラウザが「Webページをください」というリクエスト(HTTP/HTTPS)を作成。

ステップ②:プレゼンテーション層

暗号化や圧縮など、データ形式を整える(HTTPSでは暗号化)。

⚠️ 注意:暗号化は「内容を守るカギ」。パスワードや個人情報を安全に送れるのはここがあるから。

ステップ③:セッション層

通信の開始・維持・終了を管理。途切れたら再接続も。

📝 アドバイス:セッション層は「会話の司会者」。順番と継続性を保ちます。

ステップ④:トランスポート層

データを小さなかたまり(セグメント)に分割し、宛先ポート番号で識別(例:HTTPSは443)。

💡 チェックポイント:「配達ラベル」を貼って抜け漏れを防ぐイメージ。

ステップ⑤:ネットワーク層

IPアドレスで目的地と経路を決定。ルーターが中継。

⚠️ 注意:「地図アプリ」の役割。最短で確実に届けるルートを選びます。

ステップ⑥:データリンク層

同じネットワーク内で次の機器へ受け渡し(MACアドレスで識別)。

📝 アドバイス:「社内便の配送係」。LAN内の正しい相手へ渡す担当。

ステップ⑦:物理層

電気・光・電波などの信号として実際に送信。LANケーブルやWi-Fiが担当。

💡 チェックポイント:「道路」そのもの。信号が安全に通れる状態を保つ層。

送信から受信までの要約

  1. アプリでデータ作成(第7層)
  2. 暗号化・形式変換(第6層)
  3. 通信の開始・維持(第5層)
  4. 分割・宛先付与(第4層)
  5. 経路選択(第3層)
  6. 隣接機器へ転送(第2層)
  7. 信号で送信(第1層)
⚠️ 注意:トラブルの切り分けは下から順(物理 → リンク → ネットワーク → ・・・)。

5. 覚え方と試験対策

覚え方①:「上は人・下は機械」

第7〜第5層は人に近い(アプリ・見え方)、第4〜第1層は機械寄り(配達・経路・信号)。

覚え方②:語呂合わせで順番を固定

  • 上から:「アプセトネデブ
  • 下から:「ブデネトセプア
💡 チェックポイント:試験では「第3層は?」「上位層は?」など、順序と役割の組合せ設問が多い。

覚え方③:日常のモノにたとえる

OSI層 たとえ 役割
アプリケーション層 手紙の内容を書く 伝えたい情報を作る
プレゼンテーション層 文字を整える/暗号化 読みやすく・安全にする
セッション層 相手の宛名・開始終了 会話(通信)の管理
トランスポート層 封筒に入れて仕分け 分割・宛先ポート管理
ネットワーク層 郵便ルートを決める 経路選択(ルーティング)
データリンク層 配達順を決定 同じ建物内の通信
物理層 配達員が運ぶ 信号として実際に送る
⚠️ 注意:「流れ」で覚えると用語のつながりが見えて、応用問題にも強くなります。

試験で狙われやすい要点

  • 層の順番(第3層=ネットワーク、第4層=トランスポート)
  • プロトコルの対応(TCP=第4層、IP=第3層)
  • 機器の対応(ルーター=第3層、スイッチ=第2層、ハブ=第1層)
📝 アドバイス:「OSIの○層は何をする?」を10秒で説明できれば合格ライン。

6. 実務でのOSIモデル活用例

活用例①:通信トラブルの切り分け

  • 第1層:ケーブル抜け・電源
  • 第2層:スイッチ設定・VLAN
  • 第3層:IP設定・ルーティング
  • 第4層:ポート制限・再送制御
  • 第7層:アプリ不具合
💡 チェックポイント:下から順に確認すると復旧が速い。

活用例②:ネットワーク設計・セキュリティ

  • 第3層:ルーティング設計
  • 第4層:TCP/UDPの選択と安定性
  • 第6・7層:暗号化・認証・入力検証
⚠️ 注意:セキュリティは層ごとに対策が違う(暗号化・アクセス制御・監視)。

活用例③:チーム間コミュニケーションの共通言語

「第3層で詰まっている」など、層で現象を共有することで復旧が速くなります。

📝 アドバイス:OSIは問題解決の地図。層で話すと通じやすい。

7. 実際の事例から学ぶ(OSIで読み解く)

事例①:大規模通信障害(ネットワーク層)

ルーティング設定の誤りや経路情報の誤配信により、広域で通信が滞ることがあります。
ポイント:ネットワーク層は「正しい経路情報」が生命線。

事例②:Wi-Fiの接続不良(データリンク層・物理層)

電波干渉・距離・SSID競合・MAC制御などが原因に。
ポイント:「アプリのせい」に見えても、下層が原因のことが多い。

事例③:Webの脆弱性悪用(アプリケーション層)

フィッシングや入力フォーム攻撃など、アプリ自体の弱点を突かれるケース。
ポイント:通信が暗号化されていても、アプリの安全性は別問題。

事例④:認証トラブル(セッション層)

セッショントークンの発行失敗やタイムアウト設定ミスなどでログイン障害。

💡 チェックポイントまとめ:
・通信障害 → 第3層
・接続不良 → 第2〜1層
・アプリの攻撃やエラー → 第7層
・ログイン不具合 → 第5層
📝 アドバイス:
日常のニュースを見たら「どの層の話か?」を考える習慣を。理解が実践に変わります。

8. FAQ(よくある質問)

Q1. OSIとTCP/IP、どちらを覚えるべき?

基礎理解にはOSI、実務や設定のイメージにはTCP/IPが有効です。両方を対応関係で覚えるのがベスト。

Q2. ルーターとスイッチの違いは?

ルーターは第3層(IP・経路選択)、スイッチは第2層(同一ネットワーク内・MAC)。

Q3. 試験で落としやすいポイントは?

層の順番、TCPとIPの層、機器と層の対応(ルーター=第3、スイッチ=第2、ハブ=第1)。

9. まとめ

OSI参照モデルは、ネットワーク通信の共通ルールを7つの層で整理した「仕組みの地図」です。学習でも実務でも、「どの層の話か?」を意識するだけで、理解と問題解決が格段に速くなります。

OSI参照モデルの全体像(再整理)

階層 名称 主な役割 主な機器・プロトコル
第7層 アプリケーション層 人が使うアプリ・Web・メール HTTP/HTTPS、SMTP
第6層 プレゼンテーション層 データ形式の変換・暗号化 TLS、JPEG、MP3
第5層 セッション層 通信の開始・維持・終了 SSH、RDP
第4層 トランスポート層 分割・再送制御・ポート管理 TCP、UDP
第3層 ネットワーク層 経路選択・IP管理 IP、ICMP、ルーター
第2層 データリンク層 同一ネットワーク内通信 Ethernet、スイッチ
第1層 物理層 信号やケーブルでの伝送 LANケーブル、ハブ
💡 チェックポイント:
「上=人、下=機械」。トラブルは下から、理解は上からがコツ。
📝 アドバイス:
丸暗記よりも流れで理解。アプリから信号まで、データの「道筋」をイメージしましょう。
⚠️ 注意:
用語を単独で覚えず、「どの層の話?」の視点を常に添えると、試験でも実務でも強くなります。

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