私たちが普段使っているスマホや家電には、さまざまな通信技術が組み込まれています。なかでも「短距離通信」は、数センチから数十メートルの範囲でデータをやり取りする仕組みで、生活のあちこちで活躍しています。
ワイヤレスイヤホン、Suica、テレビのリモコン、スマートウォッチ…。実はこれらすべて短距離通信のおかげです。
この記事では Bluetooth・BLE・NFC・IrDA・PLC といった代表的な方式をわかりやすく解説し、違いや使い分けを整理します。実際にITパスポート試験などでも出題されることがあるテーマなので、基礎知識として押さえておくと役立ちます。
短距離通信とは?
短距離通信とは「数cm~数十m程度の範囲で使われる通信技術」の総称です。
ケーブルをつながずに、すぐそばの機器同士でデータをやり取りできる のが特徴で、しかも省電力。だからこそ、スマートデバイスや日常生活で広く使われています。
Bluetooth / BLE の特徴と違い
Bluetoothは“近くの機器を無線でつなぐ技術”です。 数m~10m程度の距離で、イヤホンやキーボード、マウスなどに広く使われています。
さらに進化版の BLE(Bluetooth Low Energy) は「Bluetoothの省エネ版」。スマートウォッチや小型センサーが電池ひとつで長く動作できるのは、このBLEのおかげです。最近では、ビーコンによる位置測定にも利用されています。
BluetoothとBLEは別物ではなく、同じ規格の通常版と省電力版の関係です。
IrDA(赤外線通信)の仕組みと現在の使われ方
IrDAは“赤外線リモコンの通信”です。 通信距離は1m未満で、障害物に弱く直線的にしか届きません。
昔の携帯電話ではアドレス交換などに利用されていましたが、今ではテレビやエアコンのリモコンくらいでしか見かけなくなりました。
NFCとは?タッチ決済に使われる短距離通信
NFCは“かざして使う通信”です。 通信距離は10cm以内と非常に短いですが、その分セキュリティが高く、電子マネーや交通系ICカード、スマホ決済で利用されています。
改札でSuicaをタッチするとき、裏側でNFCが働いています。
NFCは距離が短いからこそ安全性が高い仕組み。スマホ決済などで安心して利用されています。
PLC(電力線通信)とは?無線との違い
PLCは“コンセントを通じて通信する技術”です。 無線ではありませんが、LANケーブルの代わりに電力線を使えるため、家庭や工場で補助的に利用されます。
たとえば、ルーターから離れた部屋でWi-Fiが弱いとき、PLCアダプタを使うと「コンセント経由でインターネットが使える」ようになります。
PLCは便利ですが、建物の配線状況によっては通信が不安定になることがあります。
短距離通信方式の比較表
代表的な通信方式を整理すると次の通りです。
通信方式 | 通信距離の目安 | 主な用途 | 特徴・ポイント |
---|---|---|---|
Bluetooth / BLE | 数m~10m程度 | ワイヤレスイヤホン、IoT機器 | BLEは省電力でIoTに最適。距離測定にも使われる。 |
IrDA(赤外線通信) | 1m未満、障害物に弱い | リモコン、古い携帯のデータ交換 | 赤外線を直線的に利用。今では限定的。 |
NFC | 10cm以内 | 電子マネー、交通系IC、スマホ決済 | 「かざすだけ」で通信可能。セキュリティ性が高い。 |
PLC | 数十m~数百m(電力線の範囲) | 家庭や工場でのLAN代替 | 電力線を通信に利用。コンセントでLAN代わりに。 |
ZigBee / Z-Wave | 数十m(中継で広がる) | スマートホーム、IoTセンサー | 省電力で多数の機器を接続可能。 |
UWB(超広帯域無線) | 数十cm~数m | AirTag、スマートキー | cm単位の測位が可能。位置情報に強い。 |
Wi-Fi Direct | 数m~数十m | スマホ同士のデータ共有 | アクセスポイント不要でWi-Fi通信。 |
実生活でのイメージ
- Bluetooth → ワイヤレスイヤホンで音楽を聴く
- NFC → Suicaで改札を通る
- IrDA → テレビやエアコンのリモコン
- PLC → コンセントLANとしてWi-Fiを補助
- UWB → AirTagでカギを探す
このように、名前は知らなくても生活の中で自然に使っているのが短距離通信技術です。
まとめ
短距離通信は、私たちの生活を便利にする縁の下の力持ちです。
Bluetooth、NFC、IrDA、PLCといった基本方式を押さえつつ、IoTや最新デバイスで注目される技術も知っておくと理解が広がります。
「通信方式=距離+用途」で覚えると整理しやすいです。
覚えるときは「BLE=省電力でIoT」「NFC=タッチ決済」「IrDA=リモコン」といった短いフレーズにすると忘れにくいです。